60年代、アメリカから始まったカウンターカルチャー。
自由、戦争反対、愛と平和、人間の権利などを求める運動、
それらを表現した音楽をはじめとする芸術、
そんな流れの中で、多くの人が本棚に置いていた書籍の一つが、
リチャード・ウィルヘルム著ベインズ訳の易経でした。
その時代を欧州で生きた私のパートナーも、
当時、多くの友人たちがこの本を持っていたと言います。
1965年のシカゴ・デイリー・ニュースによるボブ・ディランへのインタビューをご紹介します。
Q:宗教と哲学についてどう思いますか?
A:僕は宗教も哲学も持っていないし、それらについてはあまり述べることはないね。
そういったものを持っている人が沢山いるけど、
ちゃんと決まり切ったものに従うのであれば、いいんじゃないかな。
何かを変えようと、色々探し回るつもりはないよ。あれをしろとか、 あれを信じろとか、こういう風に生きろとか言われるのが好きじゃないからね。
気にしないんだよ、僕は。
哲学は、僕がまだ持っていないものを、僕に与えることはできない。
万物を包み込む、偉大なものだって、この国に潜んでいるよ。
それは古代中国の哲学と宗教で、実は1つあるんだよ…
「易経」という本があるんだけど、それを押し付けるつもりはないし、話したくもないんだけど、唯一、驚くほど本物の本なんだ。
僕だけがそう思ってるんじゃないよ、誰もが知ってるもの。
この世界で暮らしている人なら、誰だって知ってるよ。
全ての事柄に基づいて、物事を見い出す全体システムなんだ。
易経を読むために、何かを信じる必要はないよ。
なぜかっていうと、信頼できる素晴らしい本であるだけじゃなく、
実に素晴らしい詩でもあるからさ。
ボブ・ディランが、更に易経について触れたものに、
彼の歌「Idiot Wind」の海賊版バージョンがあります。
I threw the I-Ching yesterday, it said there’d be some thunder at the well.
昨日、易経投げかけて見たら、雷が井戸で鳴るんだってさ。
易経への言及は、その後、より一般的な「易者、占い師」に変更され、 「Hard Rain」(1976年ライブ)バージョンでにその例を見ることができます。
I ran into the fortune teller, she said beware ‘cause some lightnig might strike.
易者に出くわしたんだ、そしたら彼女、
「気をつけて、雷に打たれるかもしれないから」だってさ。
もしこれが、ボブ・ディランが、実際に易を立てて得た結果だったならば、この「雷が井戸で」というのは、
51卦 ”震” が、48卦 ”井” に変化を意味しているのかもしれません。
51卦のキーワードは、
ショックが引き起こすもの、振るい立てるもの
48卦のキーワードは、
井戸(生きる上で欠かせない資源)、真実を探求する
易経に触発された別のソングライターに、Syd Barrettがいます。
ピンク・フロイドのアルバム「パイパー・アット・ザ・ドーン」の彼の歌「チャプター24」は、ウィルヘルム・ベインズ訳の24卦から来ています。
All movements are accomplished in six stages, and the seventh brings return.
全ての変化は6段階で完成し、7番目の段階は、再開・復帰をもたらす。
時を経て尚、美しく幽玄な易経の文章は、多くの人にインスピレーションを与え続けています。
(上記インタビューと歌の歌詞は私による翻訳です)
Tao Oracle カード By Ma Deva Padma