2月も逃げるように去り、季節は変化し、
地中海には、また春が巡ってきました。
今日は、
卦のペア 卦49”革”と卦50”鼎(かなえ)”、変化から変換へというお話。
易経には、1から64まで卦があり、
卦1と卦2、・・・・卦63と卦64は、ペア/対になっています。
例えば、最初のペア、卦1”乾”と、卦2”坤”。
卦の形を並べて見ると、
”乾”は、全て陽爻であるのに対し、
”坤”は、全て陰爻。
そして、卦が示す意味のペア、
”乾・坤”、とは、
”陽・陰” の意味を表しています。
このような関連性が、最後のペアである
卦63”既済”と 卦64”未済”まで続いてゆきます。
その中で、今日は、1組のペア、
卦49と卦50についてのお話。
まずは、卦50”鼎”。
鼎は、3本足がついた器のことを指し、調理するために使われていたものですが、
次第に、食べ物を盛る器として、祭祀の儀式で、神や祖先に供物をささげる神聖な器として、人とスピリットの間で食物を共有するために使われました。
下記の写真はその一例ですが、青銅の器で、この文化財の重さと存在感を感じていただけるかと思います。
鼎は、ものを収容し、調理するために使われたことから、取り込み、変換することを表します。
変換とは、「新しいものを把握する」という意味でもあり、理解という確固とした基盤の上に、何か新しい秩序を確立することを表します。
また、鼎は、スピリットに問いかけることを意味します。
鼎は、そこに居合わせるスピリットとの開かれたコミュニケーションの一部となり、
変換という作用に関わるものです。
この変換も、その前の卦49”革”、
つまり根本的な変化なしでは起こり得ません。
根本的な変化とは、過去を片付けること。
周時代の前に栄えていた商王朝は、独裁君主政治で、政治的に腐敗していたようです。
その退廃的な政治と、生贄を含む、神聖さとは程遠い残酷な迷信的宗教性、精神性を一新する目的で、周王朝が確立されたとも言われています。
古い方法を捨てない限り、真に新しい関係、理解、存在の方法を確立することはできません。
前回の、易とシャーマンの記事で述べた易経の著者の一人である文王は、歴史的な事例を通し、このことを痛感していたことでしょう。
易が述べる根本的な変化とは、
あなたの古いアイデンティティを捨て、今の新しい自分と一致させる、
新しいあなたのあり方と、新しい他者との関わり方を試す時、というアドバイスです。
また、”革”という文字は、動物の皮という意味を持っています。
アイデンティティーと力、それらを得るために、シャーマンたちは皮を身につけていました。
外なる変化は、内側の意識の変化から。
変化と変換は、
あなたの人生が、より素晴らしい”器”であるため、
必要不可欠な過程です。
写真:商時代の鼎